さらば、ヒャッハー
冬月の心境の異常性が筋書きを書き換えた。
二の舞でもなく、助けてでもなく、単に冬月は右腕がなくなったこの無様な体でも好きでいてくれるかと――痛みよりもその心配の方が大きかったらしい。
「冬月、なに言うてんっ。僕が冬月を好きぃなのは変わらんわっ」
冬月にとって最良の答えを出す兄は、しっかりとその体を抱きかかえた。
右腕を体に回し、左手で冬月の“右手”を握って。
「おいおい、イっちゃってんの、ふゆっきー」
「いかれているというのはあなたですがね、藤馬さん」
低い声音は怒りの音色。静かに煮えたぎる感情を持った渉が、藤馬の扇を掴んだ。
引っ張るわけでもなしにただ掴んだだけにせよ、握力は出しているようだ。藤馬が引っ張っても、閉じた扇は抜けない。