美味しい時間

「いいじゃんっ。その嘘、本当にしちゃえば」

「え?」

「俺、今日は定時で上がれるし、飲みに行くか?」

「でも……」

「何か悩み事あるんだろ? 聞いてやる」

同期というだけで、甘えていいものか……。
それに今日はひとりでいたい気分だった。楽しく話せる自信がない。
でも、寺澤の潔白な笑顔を見ていたら、話に付き合ってもらおうかなぁっと
いう気分になってきた。

「お願いしようかな……」

「そうこなくっちゃ」

嬉しそうにガッツポーズをして、「やったぁ」とはしゃぐ。そんな子供っぽい
仕草する彼のそばが、今の私には居心地が良かった。
自然に笑みが溢れる。

「寺澤くんの奢り?」

「藤野の悩みを聞くのに、俺が奢り? ったく、しょうがないなぁ」

そう言って頭をポリポリ掻き、「じゃあ後で」と仕事に戻っていった。
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