美味しい時間
私も急いでフロアに戻る。
少し離れた場所からにもかかわらず、フロアに入ってすぐに、冴子や
お姉様たちの視線に気づいた。
一瞬にしてさっきの事を思い出し、息が苦しくなる。ギュッと胸のあたりを
掴み俯き加減で席に着くと、美和先輩が心配そうに声をかけてきてくれた。
「百花。顔色悪いけど大丈夫?」
「うん、大丈夫です。心配かけて、すみません」
「ならいいんだけど……。あっ、課長はさっき部長と出掛けて、今日は遅く
なるんだって。百花のデスクに仕事置いていったよ」
美和先輩が指した方に目線を移すと、何セットかの書類があった。それに、
一枚一枚付箋が貼ってあり、細かく指示が書き込まれていた。
丁寧に分かりやすく書かれた課長の字を見て、別に愛の言葉が書かれている
わけでもないのに、優しさが伝わり嬉しさが込み上げてきてしまった。
胸がズキンと痛む。
自分から身を引こうと決めた。なのに課長に対する気持ちは、もう止められ
ないところまできている。
それでも諦めなくちゃ……。
頭を二三度振り、仕事以外の余計なことを飛ばすと、仕事に集中した。