美味しい時間

もしかしたら私のために、わざわざ時間を作ってくれたのかもしれない。
けれど今日は、彼の好意に素直に甘えることにした。
私も寺澤を追うように歩き出す。

正面玄関を出て「何食べようか」と話しながら歩いていると、「おいっ」と
誰かに声をかけられる。
恐る恐る声がした方に振り返ると、部長が立っていた。

「藤野、なんだ寺澤とデーとか?」

ニヤニヤと笑いながら、私と寺澤の顔を交互に見る。
私は、部長と一緒に課長がいないことにホっと息をつく。

「部長、違います。同期の寺澤くんとご飯に行くだけですよっ」

私がそう言っても「はいはい」軽く流され、「頑張れよっ」なんて言いながら、
寺澤の背中をバシバシ叩いていた。
その光景を苦笑して見ていたら、部長の目線が私の後ろ側に移動する。

「おうっ東堂。この二人、今からデートらしいぞ」

その言葉に驚き慌てて振り返ると、ものすごい形相で私を見つめる課長がいた。
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