美味しい時間

そしてそのまま俯いている私の顔を覗き込んだ。
あまりの顔の近さに、思わず咄嗟に寺澤を突き飛ばしてしまった。大きく
尻もちをついて、もう一度芝生に倒れる。

「痛ってーっ!!」

「あぁ……ごめん、寺澤くん大丈夫?」

慌てて近づくと、寺澤がスッと右手をあげた。起こせと言うことだと思い、
その手を掴むと逆に引っ張られ、私も芝生に倒れこむ。

「キャッ!!」

「これでお相子だ」

二人で顔を見合わせ、ププッと笑い出した。

「やっぱり藤野は笑ってるほうが可愛い」

何を急に言い出すんだろう……。驚いた顔をしていると、寺澤は照れくさ
そうに頭を掻いた。

「藤野、東堂課長と何かあった?」

突然課長の名前が出てきて身体がビクンッと跳ねると、そのまま動けなく
なってしまった。



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