美味しい時間


部長がお見合いの話をしだした時の課長の顔。舌打ち……。
あれってやっぱり、隠しておきたかったってことだよね。
そのまま隠し通して、お見合いがうまく行ったら、私は用済み……。
課長はそんな人じゃないと思いながらも、心のどこかで疑ってしまっている
自分がいる。
気づかないうちに、涙が頬を伝っていた。

「藤野? おいっ藤野、どうしたっ」

寺澤に肩を揺さぶられて、今自分がどこにいるのか思い出す。
でも寺澤の顔を見ることはできなかった。ゴロンと反対側を向き、涙を拭う。

「そう言えば、昼も東堂課長といたよな。何があったんだよ。まさか、
 課長に何かされたとか?」

黙ったまま、首を大きく左右に振る。

「俺には話せないこと?」

課長と付き合っていたことは、自分から頼んで隠していた。それを寺澤に
離してもいいのか。でもどうせ、もう終わらせることだし……。

課長とのこと、今日あったことを、寺澤に話した。
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