美味しい時間
全部話し終わると、寺澤は大きく溜息をつく。そして何かを考えるように
一度目を瞑ると、もう一度フーっと息を吐いてから起き上がった。
そして、私の顔を覗き込むように見つめてきた。
「で、藤野はどうしたいわけ?」
「どうしたいも何も、課長はお見合いのこと、私に隠してたんだよ。それに、
倉橋さんに釘打たれちゃったし……」
「ふ~ん。そんなことくらいで諦めちゃうってことは、そんなに東堂課長の
こと好きじゃなかったんだ」
はぁ? なんで寺澤にそんな事言われなくちゃいけないんだろう。
なんとなく腹がたってきて、キッと睨みつけるように彼の顔を見た。
「寺澤くんに私の何が分かるって言うのっ。勝手なこと言わないでよ……」
「勝手なのは藤野じゃん。東堂課長とちゃんと話もしないで、ひとりで何でも
決めちゃうのはどうかと思うけど」
それは男の人の勝手な言い分だ。騙されていたのは私なんだから、あっちから
何か言ってくるのが筋ってもんじゃやないっ!!
このまま寺澤と話していても堂々めぐりのような気がして、横に置いてあった
カバンを掴むとスクっとたって、スカートについた芝を払った。