美味しい時間

掴んだ携帯をそっと離すと、同じテーブルの上に置いてあった食パンを取った。
いつもならチーズトーストを作るところだけど、今日はそのままかぶりつく。

「味気ない……」

こんな寂しい気分で朝食を摂るのは、初めてかもしれない。
食パンをくわえたまま冷蔵庫を開け、牛乳を取り出す。行儀が悪いと分かって
いながら、それを直接飲み干した。

カバンの中を確認し、もう一度鏡にの前に立つ。
まだ目は腫れたままだったけれど、起きたすぐよりは幾分マシだった。

「まっ、元々たいした顔してるわけじゃないし」

そうは言ってみたけれど、そんな自分が情けなくなってくる。

そして重い足取りで、会社に向かった。

< 154 / 314 >

この作品をシェア

pagetop