美味しい時間

本当は手放したくないのに、昨晩、自分から手放してしまった恋。
なのに課長は『別れるつもりはない』『俺を信じろ』なんて言うし……。

そんなの無理っ! 

課長のことを信じれば、このまま課長と恋愛を続ければ、それは逆に、課長の
首を絞めること、大阪支店長の話を消してしまうことななる。
仕事と恋愛……。両方を同じ会社の人とするなんて、私には最初から無理だっ
たんだ。今頃気づくなんて遅すぎる……。



昼を告げる音が鳴ると、美和先輩がランチに誘ってきた。、食欲がなくて断る
と、目を見開いて驚かれた。

「百花が食べれないなんて、重症だね」

そう言って、心配そうにフロアを出ていった。珍しくフロアに、私ひとりだけ
になる。
仕事の続きをする気にもなれなくてデスクに突っ伏していると、私の頭に
ポンポンと手の当たる感触がした。
こんな時に、いったい誰? 
少しムッとして、顔だけを横に向け確認する。

「何、その顔。俺じゃ不服ってことか?」

「あっ、寺澤くん……」

ゆっくりと顔を上げると、何故だか勝手に溜息が出てしまう。

「おいおい、何だよその溜息は。せっかく晩めし奢ってやろうと思って、
 誘いに来たのになぁ」

すごく大げさにガッカリしたような態度をするもんだから、何だかかえって
面白くなってしまった。

< 168 / 314 >

この作品をシェア

pagetop