美味しい時間

笑いを堪えられず、ぶぶぅっと吹いたように笑ってしまう。そんな私を見て、
寺澤は拗ねたように怒った顔をした。

「気が変わった。もう奢ってやんない」

「ご、ごめん。私が悪かったです。そんなに怒らないでよ……」

そう言って頭を下げると、また頭を撫でられた。

「嘘だよ。怒ってないし、ちゃんと奢ってやる」

な、何だ。さっきの態度は騙してたんだ。

「べ、別に奢ってもらいたくて謝ったわけじゃないんだけど……」

「それも分かってるって」

つい憎まれ口を叩いてしまう私を気にする様子もなく、笑いかけてくれる。
そんな彼に、私も力なく微笑んだ。

「で、また何かあったの? 元気ないみたいだけど」

午前中に何があったか知らない寺澤にまで、分かってしまうような顔をして
るんだ……私。
また溜息をつくと、寺澤の質問に答えた。

「あったも何も、あり過ぎってくらいありました」

ガクッと肩を落とし頬杖ついて俯くと、今度は寺澤が笑い出した。
< 169 / 314 >

この作品をシェア

pagetop