美味しい時間

寺澤の背中を見送ってからも、出入口のドアを見ていると、美和先輩が
ひょこっと顔を出した。そして、フロアの中をキョロキョロと誰かいないか
確認すると、足早に私のところまでやって来る。

「何? 今度は寺澤くんと付き合うの?」

「はぁ!?」

「だって仲良さそうだったし、今晩も約束してたみたいだし」

「先輩、私そんな節操なしじゃないですからっ」

興味津々な顔で、私の顔をジーっと見つめる先輩に呆れて溜息をつくと、先輩
が面白そうに大声で笑い出した。

「もう百花ったら、そんなムキになっちゃって。冗談だよ、冗談」

「今の私の状況からして、それ、冗談に聞こえませんからっ」

目から涙まで流して、まだ笑っている先輩。
本当に私のこと心配してくれてるのかしら……。
疑うような目で先輩の顔を見あげれば、少しは反省したのかコホンっと咳払い
をひとつした。

「ごめん百花。でもね、これだけは言っておく。自分を見失わないように。
 そして、自分の気持には正直にね」

言っていることの意味が分からずキョトンとしていると、先輩は苦笑して、

「課長も大変だね」

そう言って、私の髪をクシャクシャと撫でた。
 
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