美味しい時間
結局お昼は何も食べないで、休憩スペースの自販機で買ったカフェオレだけで
済ませてしまった。それさえも全部飲めていない。
倉橋の言葉は、思った以上に私の体にダメージを与えていた。
この後ひとつひとつの仕事を終えるたび、課長に電話をすることさえ怖い。
また何か言われるんじゃないかと思うと、仕事も思うように進まなかった。
それでも何とか仕事を終えると、電話に手を掛けた。その瞬間……。ピタっと
手が止まったままになってしまった。こちらをじっと見ていた倉橋と目があっ
てしまったからだ。
倉橋が妖艶に微笑む。
背中にゾクッとしたものが走った。
電話から手を離すと携帯に持ち替え、震える手でメールを打ち始めた。
今後の連絡はメールでお願いしたいことを打ち終えると、もうひとつ伝えなく
てはいけないことがあったことを思い出す。
『倉橋さんが、電話をかけてほしいそうです。よろしくお願いします』
なかなか押せない送信のボタンを、目を固く瞑って無理やり押した。