美味しい時間
店の外にでると、冷たい風が頬を撫でていった。
「ちょっと冷えるな」
そう言いながら、寺澤は駅と反対の方へ歩き出す。
「駅、反対方向だけど……」
「今日は絶対に送ってく」
断っても無駄だと悟った私は、彼の好意に素直に甘えることにした。
何となく話しにくい雰囲気が続く。その雰囲気を、彼のくしゃみが変えた。
「はぁーっくしょーいっ」
「ぶっ。変なくしゃみ」
「ほっとけっ」
2人でケラケラ笑いながら歩く。
少し寒かったせいか変な雰囲気が続いていたせいか、早足で歩いていたため、
かなり早くアパート近くまで来てしまった。
「もうすぐそこが家だから」
少し後ろを歩いていた寺澤の方を向いて、後ろ歩きで歩く。
「へぇ、ホントに近いんだな」
「でしょ」
得意げに答えながら前を向き直すと、アパートの前に見慣れた車が止まって
いるのに気づいた。