美味しい時間
足が止まり、思わず息を呑む。
私の様子に異変を感じた寺澤が、歩み寄ってきた。
「どうした? 藤野?」
寺澤が近くに来たのと同時に、車のドアが開く。
もちろん、そこから姿を現したのは……課長だ。
心の片隅では会いたいと思っていた。なのに、寺澤といるこの状況が私にの
中に罪悪感をもたらし、一歩二歩と後ずさりをしてしまう。そのまま最中が
寺澤にぶつかってしまった。
「おっと、藤野あぶない」
「……ご、ごめん」
動揺して、声が上ずってしまう。
寺澤が私の目線を辿って、課長の姿に気づいた。
「東堂課長……」
「寺澤か。何で藤野と一緒なんだ」
明らかに苛立っている口調の課長に対し、寺澤は冷静だった。
「東堂課長、お疲れ様です。飯食ってきただけですよ。課長こそ、大阪じゃ
なかったんですか?」
「お前には関係無い」
最初から険しかった顔が、一層険しさを増していく。