美味しい時間
その光景を見ていたくなくて、その場から逃げるようにフロアの出入口に
向かうと、聞き慣れた声が私を呼び止めた。
「藤野、話がある。第三会議室まで来い」
足を止めて振り返ると、課長が何かを手にしてこちらに向かって来ていた。
その姿を、怖い顔をした倉橋さんがじっと見つめている。
「早く行くぞ」
すぐ横まで来ていた課長にそう促され、小走りに後をついていった。
会議室に着くと、封筒を一枚、机の上に投げ捨てた。
「これはどういう事だ」
「あっ……」
辞表だ。やっぱり主任、話してあったんだ。
辞める理由を聞かれることは当然だけど、何で課長が怒っているんだろう。
腑に落ちない気持ちを隠し、平然と話を始めた。
「一身上の都合です」
「その都合ってやつを聞いてるんだろっ!!」
だからなんで私が怒られないといけないんだろう。
だんだん腹が立ってきた。