美味しい時間
黙々と眼の前にあるランチを食べていると、自分の作る“生姜焼き”と微妙に
味が違うことに気づいた。
この甘味は、蜂蜜だろうか。
味醂とお砂糖で味付けをする私のものより、コクと香りがいい。
そう言えば、課長も“生姜焼き”が好きだった。
ビールを飲む時は味の濃いものが良いとか言って、作ってくれとせがまれたも
のだ。
この店の“生姜焼き”、一緒に食べたかったなぁ……。
自分でも気づかないうちに、顔がにやけていたらしく、寺澤が面白くなさそうに
話しかけてきた。
「なぁ藤野。今、誰かさんのこと考えていただろっ」
いきなり図星を指され、手にしていた箸を落としそうになる。
「やっぱりな……」
「ご、ごめんなさい」
何だか申し訳ない気持ちになってしまい、思わず謝ってしまった。