美味しい時間

「藤野に告白するタイミング、間違えたなぁ」

「ごめんなさい……」

「お前、さっきから謝ってばっかだな」

そう言って、私のおでこを小突いた。
小突かれたおでこを摩りながら寺澤の顔を見ると、さっきまでとは違って、
スッキリとした笑顔を見せていた。

「藤野の言いたいことはだいたい分かるから。でもさ、俺も今すぐに気持ち
 変えられないし、しばらくは片思いさせといてよ」

少し照れくさそうに目線を落とすと、お皿に残っていたお肉を手早く口に
頬張った。

それからは気まずさも消え、何気ない話をしていると、「お邪魔かしら?」と
奥さんが近づいて来た。

「もう落ち着いたみたいね。これ、どうぞ」

本来ならばディナータイムにしか提供しないと言うジェラードを、特別にと
出してくれた。
甘いものに目のない私は、お礼も漫ろにジェラード一口頬張った。
口の中いっぱいに幸せが広がる。寺澤の顔にも笑顔が零れた。

「自分で言うのもなんだけど、これ、人気あるのよ」

私たちにウインクをしてみせると、すぐに席を離れて他のテーブルを片付け
始めた。


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