美味しい時間
私には面倒な仕事を与えるくせに、倉橋さんには自分の席に戻れとも言わない。
直接の部下じゃないんだから、そばにいなくてもいいじゃないっ。
なかなか仕事が進まないのも重なって、だんだん腹が立ってきた。
「もうっ!!」
思わず大きな声を上げてしまう。私のことを大人しい性格だと思っていただろう
同じ部署の人たちが、一斉に驚いた顔をしてこちらを向いた。
課長の目線も感じ居たたまれなくなってしまい、席を立つ。
「少し席外します」
俯きがちに課長の顔を見ないままそう伝えると、急いでフロアを出た。
そのまま真っすぐ休憩スペースまで走ると、一番手前の椅子に腰掛けてテーブ
ルに突っ伏した。
仕事だけのことを言えば、課長と付き合う前までは残業なんて日常茶飯事。当た
り前のことだった。最近は減っていたけれど、さっき渡された内容の仕事も慣れ
ているはず。なのにイライラして思うように進まないのは……。
「早く帰りたい……」
疲れた声で呟くと、頬に冷たい感触がして慌てて顔を上げた。