美味しい時間
就業のベルが鳴り定時を知らせると、デスクの上を整理したり、荷物をまとめ
だす人たちが目に入る。
私はと言うと……。
案の定終わるわけもなく、目の前で鼻歌交じりに帰り支度をしている美和先輩を
ジーっと見つめていた。
それに気づいた美和先輩が、苦笑を漏らす。
「百花……。目線が痛いんだけど」
「あっ。ごめんなさい……」
何の気なしに見つめていたことに気づき、慌てて目線を戻し項垂れた。
「謝んなくていいけどさ。ほんとに大丈夫? 少しくらいなら手伝えるけど」
私のそばまで来て、小さな声でそう呟く。
美和先輩の気持ちは嬉しかったが、何となくソワソワしている先輩を見てピンと
来た。
「もしかして先輩、今日はデートですか?」
私の口からそんな言葉が出ると思っていなかったのか、美和先輩の目が点に
なっている。そして徐々に頬が赤くなっていった。図星だったみたい。
「も、百花のくせに一言多いっ」
「いつもは先輩が私をからかうんじゃないですかぁ」
「私はいいのっ!」
勝手だなぁ~っと思いながらも、真っ赤になっている美和先輩を見て、少し
気分が和らいだような気がした。