美味しい時間
先輩の姿が見えなくなると、ゆっくりとドアを閉める。
……仕事とプライベートは別ですもんね……
そうは言ったものの、まだまだ別にできてないのが本音。
同じ会社、直属の上司と先輩社員……。これでは切り離せないのも、当然と言え
ば当然で。
もちろん会社を休むつもりはない。ただ、きっと倉橋さんは、今までにも増して
勝ち誇った顔と態度を私に向けてくるだろう……。
その時に私は、平然としていられるだろうか。
二人に、祝福の言葉をかけられるだろうか。
その時のことを考えると、心臓がキリリと痛み頭がクラクラしてくる。
そうだっ。こんな気分の時は甘いモノを食べるに限る。
玄関の鍵を閉め、ふらっと歩き出し冷蔵庫に向かう。中を覗くと、何種類かの
フルーツが目に入った。
「フルーツポンチか……」
サッと取り出し、ペティナイフで食べやすい大きさにカットしていく。それを、
お気に入りのガラスのボールに入れると、なみなみとサイダーを注ぎ込んだ。
シュワシュワと音を立てて、ボールの中でフルーツ達が踊りだす。
私はこの瞬間が大好きだ。
「これ食べて、心を落ち着けなくっちゃ」
フルーツポンチを食べたからと言って明日がこないわけではないけれど、今の
私には必要不可欠な時間だった。