美味しい時間
いつも通る、通いなれた道。
普段なら20~30分の道のりが、今日は45分もかかってしまった。
自分ではそんなにゆっくり歩いていたつもりはなかったけれど、会社に行きたく
ないという気持ちの表れなんだろう。
入口のあたりでボーっと立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。
「よっ。おはよう、藤野」
肩をポンとたたかれ振り向くと、寺澤が笑顔で立っていた。
「寺澤くん、おはよう」
「大丈夫か?」
「何が?」
「何がって……」
言いにくそうにしているのを見て、あっと気づいた。
「大丈夫も何も、もう終わったことだから……」
「それもそうか。悪かったな」
少しだけ申し訳なさそうに頭を掻くと、会社へと入っていった。