美味しい時間

恐怖で身体をちぢめて小さくなっていると、課長が私を庇うように前に立った。

「こいつは関係ないだろう」

「そうやって庇うってことは、関係あるんじゃないのっ! バカにするのも大概
 にしてほしいわよね」

そんなやり取りが私の頭上でしばらく繰り広げられていた。覚えはないけれど、
何か私が倉橋さんの気に触るようなことをしたのかもしれない。このままじゃ
埒があかないと思い、謝りの言葉を言うため顔を上げると、フロアのドアが開
き誰かが入ってきた。

「冴子、いい加減にしないか」

「お、叔父様」

叔父様? と言うことは……。

(専務だぁー)

慌てて立ち上がり、身なりを整えた。目の前に立っている課長が専務に頭を
下げる。私も続けて頭を下げた。

< 238 / 314 >

この作品をシェア

pagetop