美味しい時間

「冷めちゃうから、先に食べてて」

課長の笑顔に満足すると、キッチに戻ろうと向きを変えた。しかし、その腕を
掴まれると、えっ!? と思う間もなく抱き寄せられてしまった。

「な、なにっ?」

耳元に顔を寄せる。

「俺も大好き。って言うか、オムライスも食べたいけど、また百花が食べたく
 なった」

思いもよらない言葉に、顔が赤くなる。

「そ、そんなこと言うと、もう作ってあげないっ」

頬を膨らませ怒ったフリをしてみても、抱きしめられている身体が課長を受け
入れてしまっていて、説得力がない。
自分から離れようと思えば離れられるのに、そうしない私を見て、課長がニヤリ
と笑った。

「やっぱり百花は、食後のデザートにとっておくよ」

課長に身を預けるように抱きしめられていた身体を急に離されて、体勢が崩れ
倒れそうになる。

「もうっ。急に離さないでよっ」

「悪い悪い」

本当に悪いと思って……ないよね。
呆れ顔で課長を見ると、相変わらず可笑しそうに微笑む顔。

「ほんとに冷めちゃうよ? 食べて」

「じゃあお先に、いただきます」

嬉しそうに一口頬張ると、幸せそうな笑顔。その笑顔を見届けてから、キッチン
へと戻った。






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