美味しい時間
「い……しょに?」
その言葉とともに涙が溢れ、嗚咽がもれる。それ以上は言葉にならなかった。
「そう。一緒に」
ヒックヒックとしゃくり上げながら、頭の中で考える。
『一緒に遊びに行く』とか『一緒に大阪行って引越しの手伝いをする』とか、
そのたぐいの“一緒”じゃないよね?
と言うことは……一緒に暮らす=結婚!! て意味なのかぁ!?
慌てて人一人分距離を開けて離れると、胸に手を当てて大きく深呼吸した。知ら
ない間に涙も止まっている。
ぐちゃぐちゃになった頭の中を整理して、ゆっくりと課長の顔を窺い見た。
ニコニコと笑う顔からは、その意図が読み取れない。
「結婚しないか?」
やっぱりそうだったっ!!
「わ、私と?」
わわっ。この期に及んで何て質問してんだっ、私っ!!
「他に誰がいるって言うんだよっ」
だって、生まれて初めてのプロポーズだよ。ちゃんと確認しておかないと……。
でも課長、呆れてるじゃん。って言うか、怒ってる?
「嫌なのか?」
頭をブンブンと横に振る。
嫌じゃない。嫌なはずがない。大好きな課長と結婚できるんだ。嬉しいに決まっ
てる。
なのに何故だか、素直に返事ができない自分がいた。胸に何かつっかえるものを
感じる。それが何なのか、目を瞑って考えたみた。
「百花?」
心配そうな課長の声が聞こえた。