美味しい時間

「ばーかっ!! そんなハズないだろう」

耳元に顔を寄せて、大きな声を出す。

「慶太郎さん、声が大きいよ」

耳を押さえる私を見て悪戯っ子のように笑うと、髪をくしゃくしゃと乱暴に
撫でた。

「もう絶対に離さないって言ったの忘れたのかよ。まぁ、結婚してすぐに別居っ
 ていうのもなんだし、結婚の時期については、これからゆっくり話していけば
 いいだろ」

「じゃあ……」

「しばらくは遠距離恋愛ってやつだな。将来の二人の為、お互い我慢だ。でもな
 ぁ、俺、大阪行ったら激務が待ってんだろうなぁ。なかなかこっちに帰ってこ
 れないと思うけど……」

「それなら大丈夫っ!! 私が毎週末に会いに行くからっ」

良かった。付き合いも結婚の話もそのまま。
だったら大好きな課長に会いに行くんだもん。大阪に行くぐらい、大したこと
じゃない。一人寂しい週末を過ごすより、課長と一緒の時間を少しでも楽しみ
たい。

「おいおいっ。会いにくるのはいいけど、あまり無理するなよ」

そうは言ってるけれど、課長の顔からは心配より嬉しさがにじみ出ていたのを、
私は見逃さなかった。
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