美味しい時間

「ほんと、百花って分かりやすいのな。そんな顔赤くして、朝からエロい」

「エ、エロいって……」

「まぁ百花がそう望むなら、俺頑張って毎晩でも……」

「望んでないし、頑張んなくてもいいっ!!!」

課長から目を逸らすと、大口でチーズトーストにかぶりついた。

一緒に暮らすかぁ……。それって結婚生活の予行練習みたいでだよね。
グンッと一気に結婚が近くなったみたいで嬉しくなる。
料理も毎晩食べてくれる人がいる方が作り甲斐があるし、腕も上達する。
また新しいメニューを考えなくちゃっ!
チーズトーストをくわえ両手で小さくガッツポーズをしていると、頭をゴンっと
小突かれた。

「いつまでもアホ面してると、会社に遅刻するぞ」

トーストをくわえたまま振り向くと、ぶっと吹き出して笑われた。

「笑わなくてもいいのに……」

ミルクティーを飲みながら、洗面所へと歩いて行く課長の背中を見つめている
と、時計が目に入る。

「あっ、もうこんな時間っ!」

残りのミルクティーを飲み干すと、慌てて後片付けを始めた。
ガチャガチャと音をたてたせいか、課長が洗面所から顔をのぞかせる。

「そんなの、帰ってからやればいいだろ」

「う~ん、何となく落ち着かないからやってく」

「そっか。悪いな」

何気なく返事してしまったけど、帰ってからやればいいってことは、今日も
課長の家に帰るんだ、私。
い、いきなり同棲開始?
鼓動が速くなるのを感じながら、洗い物をするスピードも上げていった。



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