美味しい時間

そして、生活の方はと言うと……。

あの騒動の日以来、私は課長の家で暮らしている。
まぁ正確に言えば、“暮らさせられている”と言った方がいいかもしれない。
休みの日に、一緒に荷物を取りに行く時くらいしか家には帰れないんだもん。
『これじゃあ、監禁と変わらないっ』
一応抗議はしたんだけど、
『いや、監禁じゃなくて軟禁くらいだろ』
って、やっぱり束縛されてるのには変わらないと思うんだけど……。
でもその束縛も案外悪くない……と思っているのは内緒。
課長が大阪に行く日までの短い同棲生活。
短い期間だからこそ、お互いに気持ちを素直に伝えられた。
これでしばらくは、ひとりでも頑張れそうな気がする。

新しい発見もあった。
ほぼ毎日一緒にいると、課長の本当の味の好みが分かってきた。
かなりの甘党だっ!
もちろん甘い物が好きなのは知っている。食後のデザートは必ず食べるし、
お弁当の玉子焼きも砂糖たっぷりのあま~いのが大好きだ。
でもお酒も好きだから、おつまみはしょっぱい系を出してたんだけど……。
どうも違うみたい。
全体的に、甘くて濃い味を好むみたいだ。
もっともっとレパートリーを増やして、課長を喜ばせたい。
そして、二人の味を作っていけたら、そんな幸せなことはない。

一緒に暮らすということは、毎日夜が来るわけで……。
毎晩……とまではいかないけれど、幾度となく身体を重ねた。
求められれば、断る理由はない。だって、私も抱かれたいと思ったから……。
自分の中にこんな感情があることが驚きだ。
身体には無数の紅い痣が、まるで薔薇の花弁のように散りばめられている。
この身体は俺のものだと誇示するように、鈍い痛みを与えながら私の身体と
心を支配していった。
こんなにされて課長の身体を情熱を覚えてしまったら、ひとりになった時が
寂しすぎる……。
恥ずかしながら、そう課長に言ってみたら、
『そういう時はすぐに言え。電話でしてやる』
と、訳のわからないことを言っていた。
で、電話で何をするんだろう……。課長に聞くのは違う気がする。今度、美和
先輩にでも聞いてみよう。

とにかく、この短い同棲生活は、私たちの関係をより深いものにしていった
のは間違いなかった。
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