美味しい時間

キッチンに立つと、買ってきた食材を取り出す。

「慶太郎さんがあんなこと言うから……」

それらをテーブルに並べながら呟く。
そっと頬に手を当てると、まだ熱く火照っていた。

「私を食べる……」

私は課長が好きだし、課長も私が好きだと言ってくれた。
と言うことはいずれ、そう遠くない未来にはそうなるんだろう。
頭では分かっている。分かってはいるけれど、初体験の私はどんな時にどんなタイミングでとか、それはもう色々と考えてしまって……。
それに正直なところ、身体を許してしまうことが怖かった。

どこかで聞いたことがある。

(男の人って、処女を嫌うらしいよ)

正しく私は、その処女だ。
雑誌なんかで一応のことは知っていても、実体験がない。
課長を信用してないわけではないけれど、心配で仕方なかった。

「ご飯作ろ」

はぁ……今は晩ご飯を作ることだけ考えよう。
もう課長はこっちに向かっているんだから。

何とか気持ちを切り替えて、てきぱきと調理を始めた。

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