悪魔の熱情リブレット
アンドラスの気まぐれでティアナは生かされた。
しかし全く喜べない。
多くの命の犠牲の上に永らえることは、幸運と言えるのだろうか。
幼い少女には難しすぎて答えなどでない。
彼女がわかることといったら一つだけ。
「ママ…」
大好きだった母がもうこの世にはいないということ。
「私のせいで…ママ、死んじゃった…」
唐突に泣き出した少女に悪魔は大きな溜息を吐いた。
「やれやれ…。人間の小娘の泣き所がわからないよ」
怠そうな声でアンドラスは腹心の部下に命令した。
「シルヴェスター。ティアナのおもり、任せたよ」
「ご自分で育てると言っていましたが…?」
「何?逆らうき?僕の忠実なシモベである君が?」
自分より格上の悪魔であるアンドラスには絶対服従。
一度でも裏切れば、彼は容赦なく苦痛と絶望と破壊を与えるだろう。
「…主の我が儘には慣れています」
シルヴェスターはしぶしぶティアナに目を向けた。
「ティアナ様。泣き止んで下さい。お願いします」
無表情で心のこもっていない喋り方。
ティアナは何だか余計に恐くなった。
涙は一向に止まらない。