悪魔の熱情リブレット
ちょっぴり見惚れてから我に返る。
(うそうそ!私はエーリヒと婚約してるんだから!他の男の人にぽーっとしちゃダメ!)
自分を戒めているとアンドラスが話し掛けてきた。
「君さ、僕と会っても変化なし?」
「変化…?」
「君と僕は愛し合ってたんだよ。愛しい相手にまた会えても、記憶は真っ白のまま?」
「愛し、合って…!?」
信じられない。
彼女は顔を赤らめて「ありえない」と言いたげに首を振った。
その表現に苛立ちを覚えたアンドラス。
抱いているアウレリアを見下ろし、告げた。
「…よし、こうなったら…君と僕の思い出巡りをするしかなさそうだね」
「思い出巡り…?」
恐々聞き返す。
「そう。行くよティアナ!僕達がいちゃついた現場に行って、それを再現するんだ!」
「え…?い、いやぁ~!」
今の彼女にとって、婚約者以外とは進んでそんなことしたくない。
「文句は聞かないよ」
しかし、相手は無情だった。
「下ろして~!」
じたばたしてみるが無意味に終わった。
「まずはっと…教会に行こうか」
この時を思いっきり楽しんでいるアンドラスの声が、意地悪く耳に響いた。