悪魔の熱情リブレット
暗い態度のライナルトにアンドラスは八つ当たった。
「何でなのさ!?ライナルトは記憶を取り戻したのに、ティアナは無理!?そんなことあって堪るもんか!」
怒鳴る彼の隣でライナルトは自分の体験を呼び戻してみる。
「俺は大切な人を見て思い出したんだ。だから、心に強く残っているものを見せた方が効果があるかもしれない」
経験者のアドバイスを参考に思案する。
「強く残るもの…?大切なもの…」
――とっても大切…
不意にアンドラスの脳内に響いたティアナの声。
(あれ?今の言葉…ティアナが言ってたような…?)
いつ聞いたのか頭を全力で回転させ、記憶を追いかける。
(いつ?どこでだった…?)
――私はこの町とずっと一緒…
また聞こえた。
(そうだ!あれは…!)
――私はこの町とずっと一緒。だから大好きだし、とっても大切
(僕がこの町が好きか尋ねた時!)
アンドラスはアウレリアが持っていたシャッテンブルクの地図を取り出し、先程シルヴェスターに修復させたばかりの居間のテーブルに広げた。