悪魔の熱情リブレット
「ティアナ!町全体を見て、何か感じた?」
広げられた古い地図を指し、アンドラスが切羽詰まったように問い掛けた。
「…何となくだけど、初めてなのに…懐かしく感じた…」
やっと掴んだ記憶の破片に明るい表情になる面々。
「ならば、高い所から町を見下ろしてみるといい」
マルコシアスが口から炎を吐き出しながら提案した。
「そうだね。教会の屋根には行ったけど、町全体をちゃんと見るんだったら…」
アンドラスは微笑し、アウレリアの腕を引っ張った。
「時計塔しかないよね」
「狼も喋った!」とびっくりしている彼女を引きずるようにして外に連れ出す。
悪魔と少女は長い塔の階段を駆け上がり、頂上の展望台へと急いだ。
少し日が傾いてきた。
空はまだ明るさを保っているが、直に暗い色が支配するだろう。
彼らが展望台に着いた時はそのような頃だった。
「足、疲れた…」
急な上り階段にヒーヒー言うアウレリア。
「でも無事に着いたでしょ?どう?ここからの眺めは」