。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「靴はそのままで良いわ」
あたしが命令すると、響輔は
「え、でも。ベッドやし」
と、またも常識的なマイペース発言。
「つべこべ言わず言う通りにして!」
あたしが響輔の額に拳銃を突きつけると、響輔は諦めたように前を向いたままベッドに腰掛けた。
「さがって。もっとよ」
響輔の額に拳銃を突きつけたまま、あたしの命令に響輔はそのままの姿勢で後ろにさがった。
あたしは枕元までじりじりとこいつを追い詰め、
今度こそ本当に行き止まり、と言うところで響輔が改めてあたしを見上げる。
あたしは響輔の脚の間に入り、膝をつくと両手で拳銃を構えて響輔をひたと見据えた。
響輔が目だけを上げる。
「ねぇ、さっきあんたはあたしを傷つけたって言ったけれど、
安心してよ。あたしは傷ついてなんかない。
自惚れないでよ」
響輔をまっすぐに見下ろして睨むと、響輔はゆっくりとまばたきを繰り返した。
翼のような長い睫に縁取られた切れ長の目がまばたく度に、その黒い瞳の中にあたしが映る。
何を思っているのか知りたくて、こいつの目の奥まで覗き込みたいけれど
黒曜石のような瞳は何も語りかけてはくれなかった。
結局あたしは―――こいつが何を考えているのか、最期まで知ることができなかったのだ。
あたしは拳銃を持ち変えると、スライドを起こそうとその場所に手を持っていこうとした。
その瞬間だった。
一瞬の隙をつくように、
響輔の膝が風を切るような速さであたしの手元に飛んできて、
「あ!」
その膝はあたしの手首に命中し、その思いのほか力強い膝の力に、
あたしの手から拳銃が滑り落ちた。