アゲハ~約束~
「ねぇ。」

「ん?」



 二人が、振り返る。



「・・・私・・・すこし、海に行ってくるね。」



 彼女は、そういって、微笑む。



「・・・」



 その笑みは、傾いた夕日に照らされ美しく、しかし何処か危うく――・・・



「・・・ついて、いこうか。」



 えもいわれぬ不安に突き動かされるように幸人は、その言葉をのどから絞り出していた。

 しかし、アゲハは静かに首を横に振る。



< 110 / 146 >

この作品をシェア

pagetop