アゲハ~約束~
「約束する。・・・必ず戻ってくる。アゲハのところに。」



「・・・」


「絶対。戻ってくる。いっぱい写真とって、すぐに帰ってくる。」

「・・・」

「・・・ね・・・?」



 ―――なぜかそのとき。


 彼の顔が、泣きそうに見えて。


 アゲハは、目をそらした。



「・・・そんな約束、しないで。」




 自分に触れる手も、ゆるりとかわして、彼女はキャスターのついた椅子を、後に滑らせる。



「そんな約束しなくていい。守ってくれるとも思わないし、思えない。」



 そんな約束は、信じるだけ、つらいから。


 傷つくから。


 自分を守る唯一の術。





 信じないこと。





「勝手にどこへなりとでも行ってよ。ここへも戻ってこなくていい。そんなの・・・信じられるわけないじゃない。」



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