アゲハ~約束~
 ――――その、心地よく降る言葉を心にしみこませながら、アゲハは、そっと瞳を閉じる。


 彼の帰りがないことに苛立って暴れた自分。


 寂しくないと自分に言い聞かせないと、駄目になりそうだった。


 別れを告げられたとき、えもいわれぬ不安を覚えた。


 彼から約束を持ちかけられたとき、それを頑なに信じようとしなかったのも、何もかも、全部。


 これで答えが出る。

 ――――彼が、好きだった。

 ちがう。

 ―――過去形じゃない。



 好き、だ。



 誰よりも。




「・・・必ず・・・ここに戻ってきて。」

「アゲハ?」

「そして、こうやって抱きしめて・・・・」



 彼の背中に手を回して、彼の力と同じくらい、力をこめた。



「すき・・・」



 ―――ねぇ、やっと、私、素直になれる。

 あなたのおかげで、憧れだった素直さを手に入れられた。

 約束も、信じられそうな気がするの。



「・・・ありがとう・・・」





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