空の記憶


めると「そんなことがあったんだな。」
俺にはあの時足りなかった親友の存在。
今はたくさんの友達、唯一無二の親友がいるが、あの時はいなかった。
何もかも恵まれているように見える銀朱が羨ましかった。
でも俺はその高みに登るには遅すぎた。全てを諦め、自分の道を貫かなかった俺の落ち度だ。
今さら銀朱を羨むのはお門違いかもしれない。
そう思っていると

銀朱「もしかして諦めたこと後悔してる??」
と聞かれた。

めると「えっ??」

銀朱「だってめる兄夢の事話すとき辛そうな顔する。」

めると「そんなことないよ。」
精一杯笑った。

銀朱「その顔だよ。今辛そう。」

めると「銀朱にはわからないよ。」

銀朱「ああ。わかんないね。諦めたやつの気持ちなんて。」

めると「っ……」
言い返したかった。でも俺にはできなかった。と言うよりしたくなかった。
もう何を言っても俺の人生は戻ってこない。諦めたんだから。
銀朱にそう思われたならもういい。
何もかも俺には関係ない。

銀朱side
めるとくんを挑発してみた。
でものってはこなかった。
本当に何もかも諦めてたんだ。
夢も、自分の人生でさえも。
大事な、尊敬する兄をここまでさせた両親を恨みたかった。
俺はめるちゃんに話した。

める「なんでめる兄にそんなこと聞くの!!」
怒られた。理由がわからない。

銀朱「ただ挑発しただけだよ。」

める「銀朱は知らないから挑発なんて非道な真似できるのよ!!」

そこまで言われたら俺だってキレたくなる。
銀朱「さっきからなんだよ。怒ってさ。ただ挑発しただけじゃん!!しかも非道って……意味わかんねぇよ!!」

める「める兄は本当は左利きじゃない。」

銀朱「なにが言いたいんだよ。」

める「右利きから左利きに変えなければならない理由があったってことよ。」

銀朱「もったいぶらずに言えよ。」

める「める兄は10年前に右手をお祖父様に壊された。」

銀朱「えっ……??」

める兄「める兄が銀朱を連れて海やプールへ行ったときとか覚えてる??」

銀朱「ずっと……服着てた……」

める「右肩に傷あとがあるからなんだよ。銀朱が生まれてすぐのことだった。銀朱が生まれてお祖父様は銀朱を指揮者にしようとした。でもめる兄が止めた。
そしたらお祖父様はお前が指揮者になるというのかと問いかけられた。でもめる兄は夢があったから答えなかった。この事に腹をたててお祖父様は手元にあったペーパーナイフでめる兄の右肩を刺した……いや裂いたという方が正しいかな。」

銀朱「父さんと母さんは止めなかったの??」

める「とっさのことで止めることができなかったの。でも刺されたのは一回だけ。後は二人が止めたわ。でもそれ以来右手は上がらないくらいになった。今でも頻繁に腕が炎症を起こしたり、痛くなったりしてるみたい。」

銀朱「一緒に風呂に入ったりするのに気づかなかった。」

める「気づかないように細心の注意をはらっていたようだからね。」

銀朱「俺……謝らなきゃ……」

める「謝って、ちゃんと向き合って。夢の恩人に。」

泣いていた。
どんなに辛いことがあってもなかないめるちゃんが。
愛のない政略結婚したときでも相手の気持ちが変わるくらいに一途に何でも頑張るあのめるちゃんが泣いていた。

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