先生とシンデレラ
急に先生と二人っきりになってどうすれば良いのかわからなくなって下を見ていると先生はゆっくりと私に近づいて来た。

それから、私のうつむいてる顔がよく見える様に下から覗き込んで

「羅々」
と優しく私の名前を呼ぶ。

「…先生は何で羅々が緊張してるのか、わかんないんだけど。」

「え…」

元の姿勢にもどった先生を見ると。

先生は微笑みながら
「…だって、羅々以上に可愛い子なんていないのに」

「…っ」

この言葉は
嘘?
本当?
お世辞?
本音?

「羅々が、一番、可愛いのに。」

思わず先生のスーツの袖を引っ張ると。

「…こんな羅々の姿、誰にも見せたく無い。」

「先生…」

先生は座ってる私を抱きしめて

「せん…っ」

私の出ている肩を大切そうに包み込んで、首筋におでこをくっつけて。

「羅々を選ぶんじゃ無かったな」

「…何言ってるんですか。私、先生に褒めて欲しいからこんな事してるのに…」

「…うん」

「私、他の男の子なんて見えてないの、知ってるくせに。」

「…うん」

「それが、先生のせいなのも知ってるでしょう…?」

先生の背中にゆっくりと手を回して。

「…うん、知ってる。」

先生は私の耳の裏側にゆっくりと唇を当てて。

ちゅ、と吸った。

「…っ」

「ここなら、見えないでしょ」

「…」

先生はゆっくりと私から体を離した。

先生の顔を見ると。

「…何で…そんな顔するの?」

先生は泣いてるのか、笑ってるのかよくわからない顔をしてて。

「…さ、羅々そろそろ行こう。もう緊張なんてしてないでしょ。」

そうだった。

私と、先生は。

泣きそうになるのを我慢して笑って
「…はい」

「そのドレス、本当に良く似合ってるから心配しなくていい。」

「…知ってます。
だって、先生が選んでくれたんだもん」

先生は驚いた様に目を見開いてから笑って
「…そうだよ。まぁ、当たり前だよね。」

私がクスッと笑うと。

先生は私と同じ様に笑って。
「そのドレス、歩きにくいでしょ。」

そう言って差し出された手をキュッと、無くなってしまわない様に、握った。




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