先生とシンデレラ
震える手でハンドルを握って。

「…うるさいよ。」

「うるさいって、お前な「うるさいってば!」

少しの、沈黙。

「…蓮?」

潤の驚いた様な声に我に返る。

潤が、俺の事を考えて言ってくれてるのは分かってるのに。

唇を強く噛んでから一言。

「…ごめん。」

「…いや、俺の方こそ…」

そこからは二人とも口を開かなかった。




見えてきた潤の家の前で車をゆっくりと止める。

長い沈黙を破る様に、俺は口を開く。

「…羅々の事は、自分で何とかするよ。」

羅々の顔を思い描きながら。

「…この気持ちがどう言う物かも分かってるし、それに対する羅々の気持ちも知ってる。」

「…」

目線を逸らさずに潤をゆっくりと見て。



「…でも、それに対する世間一般の反応も分かってる。」

それは。

きっと。

羅々を傷つける。

「それが俺じゃなく、多分羅々に降りかかるんだろうって事もね。」

潤から目を逸らしてハンドルにもたれかかる。

「だから、止めなきゃいけない。どうにかしないといけない。」

羅々の微笑む顔が
                     声が
頭をかすめる。

「なのに。」

“先生”

「…止められない。」

黙りこくった潤を、笑いながら見つめて。

「…最悪だよ。こんな事初めてだ。」
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