先生とシンデレラ

「では、羅々と優希は先に控え室行って衣裳に着替えなさい。以上、解散。」

朝の連絡が終わって、先生のその言葉を合図に、皆がバラバラと自分のやるべき事をする為に動き出す。

その様子をぼーっと見ていると先生が教卓の所から
「…羅々、一緒に行くよ。」

「っあ、はい。」

先生の言葉に大きく返事をして、私も控え室に行こうとすると、パタパタと華ちゃんが走ってきて、私の手をぎゅっと握った。

「っ羅々！緊張せずに頑張るんだよ！私も頑張るんだから、羅々も頑張りなよ！」

「うん、華ちゃんもね。私、ちゃんと見てるからね。」

私のその言葉を疑問に思ったのか、華ちゃんは
「…え？見れるの？」

「うん。私、さっきスケジュール見たけど全部見ようと思えば見れるよ。でも、源氏物語しか見ないつもり。変に自信なくしたら困るでしょ？」

私がそう言って笑うと。

華ちゃんはいきなり私をぎゅっと抱きしめて。

「セリフなんかね、飛んだら黙ってれば良いんだよ！先生がどうにかしてくれるから！ね、先生！」

華ちゃんは私を抱きしめたままそう言って、教室のドアの所で私を待っている先生に大きい声で呼びかけた。

先生は腕を組みながら、少し笑って。

「…うん。」

「羅々はね、そうやって立ってるだけでも可愛いんだから、立ってるだけで良いんだよ！「いや、それはダメだけどね。」

先生の鋭いツッコミなんて華ちゃんは聞いていないかのように話し続ける。

「奥田なんとかなんかより全然可愛いんだから！」

奥田なんとかって…

私が少し笑う。

「ね、先生！」

「…そうだね。」

「私の羅々が一番可愛いで「華のじゃないけどね！」

先生の強い口調に華ちゃんはふてくされながらも返事をする。

「…はい。」

その様子を見ていた三浦君は笑いながら。

「華、早く行かせてやれよ。加藤が待ってるぞ、長谷川。」

その言葉に、ゆっくりと先生を見ると。

先生は優しく笑いながら手招きをして。

「…早くおいで。」

すると華ちゃんはゆっくりと私の体を離して。

先生には聞こえないぐらいの小さな声で。

「優勝して、先生と結婚式、挙げるんでしょ。」

その言葉に、控えめに頷く。

「…うん。」

「どうしても、先生と挙げたいんでしょ。」

「うん。」

そう言うと華ちゃんは笑って。

「その気持ちがあれば大丈夫！」

そう言って私を先生のいる方へ回転させて、背中をポンと叩いた。

三浦君も、
「俺も頑張るから、二人で優勝な！」

その言葉に笑って頷いて、私を待ってくれてる先生の元へ駆け寄る。

私と先生が教室から出ようとすると。

「っ羅々！笑って！」

華ちゃんの大きな声が聞こえて。

私は、その言葉にもう一度華ちゃんがいる方を見て。

華ちゃんの笑顔につられるように、笑った。