蒼穹の誘惑
「結婚はまだしたくないのですか?」

高宮の質問は終わらない。

彼がこんな風にみずきのプライベートに興味を持つとは以外だった。

「したくない、というよりできないわね」

「何故です?」

「だってできると思う、この私が?」

みずきはほんの一瞬だが、少し淋し気な表情をみせた。

「そんな儚い夢、とっくの昔に捨てたわ……」

「…………」

「仕事人間の父は帰るところと言えば、愛人の元。両親が別居して、一人寂しくお手伝いさんの作ったご飯を食べていたわ。幼いながらに、自分は早く結婚して、子供をたくさん産んで専業主婦になるって、そんな夢をみた時があったわねぇ。まぁ、その夢も両親が離婚したときに現実を受け入れて捨てたけど。今となっては、目玉焼きくらいしか作れないバリバリのキャリアウーマンよ」

「クス、確かにあなたに専業主婦はムリでしょう?フライパンがいくつあっても足りない」

「失礼ね、やればできるのよ、多分……」

相変わらず高宮の言葉にはトゲがあるが、どこか優しい響きを持っていた。


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