蒼穹の誘惑
「社長、先にシャワー使いますがいいですか?」

身体はまだ抱きしめられたままだ。背後から降ってくる掠れた声に、みずきはただ頷くしかできない。

「クス、緊張しているんですか?達也は一度テレビを見出すと、火事でも起きないかぎり動きませんよ?」

達也のせいではない。

そう反論したかったが、そんなことを言えばまたからかわれる、とみずきは何も言わなかった。

「ねぇ、離れて?シャワー浴びてきなさいよ」

やっといつものみずきらしい台詞が吐かれるが、どこか声に力がない。

「すぐに済みますから、その次にどうぞ」

そう言ってベッドから出た高宮は裸のまま部屋を出て行った。

みずきはパタッと倒れるようにベッドに横たわる。隠す必要もないのに毛布で身体をぐるぐる巻きにした。


(こんなことで何ドキドキしているの?照れて顔がまともに見られない……)


「達也がいるせいよ、ね?」

みずきは毛布で頭を覆い隠し、自分を納得させるように呟いた。


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