蒼穹の誘惑
楽しみにしていたか、と聞かれれば、イエスと答えられない。

今のみずきには、何故か浅野とのデートが重荷にしか感じられないのだ。

何も答えないみずきに、高宮は追い討ちをかけるように続けた。

「デートの時は絶対にビジネスの話をしないでください」

「どういう意味よ?」

「ビジネスの話で場の空気を白けさせるなと言っているのです。浅野はもうあなたに堕ちている。2週間の間、あなたのことばかり考えていたのでしょう。それを利用すべきですよ」

高宮はみずきの顎を指でクイっと持ち上げ、冷淡とも言える口調で続けた。

「以前申し上げたでしょう?全てはあなたにかかっている。言っている意味は分かりますね?」

じっと見つめられるが、みずきが魅かれたその瞳は、ブラインドが降りたこの社長室では、漆黒に冷たく光るだけだ。

その何の感情も読み取れない漆黒の闇に背筋がブルッと震える。


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