蒼穹の誘惑
いつも難なくこなしていた「デート」と変わらない、慣れているはずなのに、今日はどうしても楽しむことができない。

ビジネスを抜きにした食事とはいえ、みずきにとっては契約を確実にするための前哨戦である。

ゲームの一コマだ、と自分に言い聞かせても、今までのような高揚感はなかった。

浅野のことは気に入っている。26とは思えない洗練された知識に頭の回転の速さ、そしてそれをひけらかそうとしないところがまた好ましい。

だが、どうしても目の前の完璧なほど美しい男とセックスする気にはなれなかった。

「浅野君、申し訳ないけど、少し体調が良くないからこれで失礼するわ」

「大丈夫ですか?」

下心も見せず心配そうに覗き込まれ、みずきは罪悪感にそっとその髪に手を伸ばしそうになる。

ちょっと前のみずきだったら「お詫びに」と軽くキスをしていただろう。

「ごめんなさいね、せっかくのデートだったのに」

「いえ、みずきさんの体調の方が大事です。また今度デートに誘ってもいいですか?」

これは本当に地なのだろうか。今時の大学生の方がもっとかけ引きの仕方を知っているのではないのだろうか。

「勿論よ。でも、浅野君みたいにいい男、他の若くて魅力的な女の子たちがほっておくはずないわ。どうして私?」

みずきは試すように浅野を見つめた。



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