蒼穹の誘惑
先ほど浅野に向けていた笑顔とは対象的に、エレベーターを降りたみずきの表情は一転して冷たい。

ホテルのエントランスを出ると、みずきの予想通り高宮が待っていた。

みずきはカツカツとヒール音を立て、真っ直ぐ高宮の方へと歩みを進める。

無表情で車にもたれるように立つ高宮の前に来ると、思いっきりその頬をひっぱ叩いた。

「満足?うまくいったわよ」

「それはよかった」

頬に手を当てながら、何事も無かったようにみずきを見下ろす。

「なんて男なの……」

「どうとでも」

「…………」

この男に人間の血が流れているのだろうか。能面のような綺麗な顔からは何の感情も読み取れない。

「一人で帰るわ」

みずきは踵を返し、後方に停まっているタクシーへと向かおうとしたが、高宮は強引に彼女の腕を引き寄せた。



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