蒼穹の誘惑
(2)


次の日、みずきは一睡もできず、いつもより一時間も早く出社した。

アームチェアーに座り、これから行うことが正しいのか目を閉じて考え直す。

昨夜何度も考えて出した結論だというのに、まだ迷う自分がいる。

想いを逡巡させていると、コンコンと社長室のドアが鳴り、高宮が入ってきた。

「どうしたのですか?いつも遅刻しても早く来られることはないあなたが」

高宮は昨夜のことなど何もなかったように振る舞う。

新聞をローテーブルに並べ、決済書類をみずきに手渡す。

なんらいつもと変わらない朝の光景だ。

あの能面のような美しい顔の下で何を考えているのだろうか。

「話があります」

みずきはデスクに肘をつき両手をぎゅっと組む。

「おおよそのことはわかりますが?」

「そう、それなら話は早いわ」

「昨夜、叔父から、副社長から電話があったわ」

「そうですか?珍しいこともあるんですね」

とぼけているが、高宮は今からみずきの言わんとしていることをおおよそ察知しているようだった。



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