蒼穹の誘惑
みずきは目を閉じ、深く深呼吸する。そしてアームチェアーから立つと、ソファの上に座った。

いつものようにしなやかな脚を組み、高宮の淹れたコーヒーを一口啜る。

「ん、おいし……」

傍に立つ高宮を見上げると、変わらないいつもの表情で微笑む。

「高宮君、あなたを解雇します。もう来なくていいわ」

まるで、コピーを取ってきてとでも言うように、高宮に解雇通達をする。

「我がままなお嬢さん社長」の気まぐれ----

そんな風に終わらせたかったのかもしれない。

それでも高宮は全く動じた素振りも見せず、フッと笑ったかと思うと、みずきの髪に指を絡める。

「寝ずに出した結論がそれですか?隈ができていますね。コーヒーではなくハーブティーにしますか?」

「聞こえたの?」

「無理ですよ。我儘なお嬢さん社長の面倒を誰が見るんですか?」

「あなたの代わりはいくらでもいるわ」

「だから、無理ですよ」

高宮はみずきの髪を弄びながら、断定的に宣言する。



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