蒼穹の誘惑
全てが終わり、高宮がみずきの身体から離れると、彼女はその場にずるずると座り込む。

「どうして?どうしてこんな、意味のないことをするの……?」

衣服も乱れたまま、虚ろな表情で問う。

「最後のお別れ、ですよ。あなたとのセックスは良かった。最高の相性でしたよ」

高宮は、茫然とするみずきの前に脚を立てしゃがむと、めくれあがったスカートとはだけたシャツを直す。

「最後に堪能させていただきました」

冷たくみずきを見据える高宮の瞳には、情けない顔をした哀れな女の姿が映る。

みずきはなけなしのプライドを総動員させ、高宮の手を振り払った。

「恥を、知りなさい……」

こみ上げてきそうな涙を抑え、そう小さく零すと、化粧室へと逃げ込むように入りドアを閉めた。

みずきはそのままドアに縋るように崩れ落ちる。

彼女の大きな瞳からは大粒の涙がこぼれ、その場で声を押し殺して泣いた。

親の離婚から15年の間、みずきが初めて悲しみに流した涙だった。



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