蒼穹の誘惑
高宮はシャツのボタンを開けたままソファになだれ込むように座った。

「何をしているんだ、俺は……」

あそこまでするつもりはなかった。

もっと上手く立ち回れた筈なのに-----

浅野につけられた痕を目の当りにすると、つい感情の赴くまま彼女を貫いてしまった。

高宮は苛立ちを押さえるように煙草を手に取る。

その横顔は苦痛に歪み、何か吹っ切るように目を閉じ煙を嚥下する。

煙草が吸い終わる頃には、いつもの冷静な高宮の表情に戻っていた。

衣服の乱れを直すと、ジャケットからスマホを手に取り、ヘッドセットを耳にかけ、素早く片手で操作する。

「高宮です-----はい、予定通りです。今からお部屋に伺います」

端的に通話を終え、スマホをジャケットの内ポケットに戻す。

閉じられた化粧室に一度視線を移すが、高宮はそのまま社長室を後にした。




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