蒼穹の誘惑
温くなってしまったお勧めのブレンドコーヒーを飲みながら、読んでいた小説を閉じる。

気付くと、もうお昼近くだ。今日はかなり読書に集中していたようだ。

段々と激しくなる雨を眺めながら、今日は傘を持ってきていなかったことに気付いた。

今日のように蒸し暑い日は、雨に濡れて帰るのも悪くないかもしれない。

サンダルを脱ぎ、裸足で歩いて帰ろうか、などという幼稚な発想に、何故か心がうきうきした。

よくよく考えると、自分は今までハメを外してバカなことをしたことがない。

ハーバードスクエアで飲み歩き二日酔いで試験を受けたり、複数のセックスフレンドを持っていたことがそれに当てはまらないのか、と言われれば愚問だが、それは、自分の中の理性と常識の許す範囲での行動だ。

ゴシップガールのようなセレブリティな日常は、世間一般の常識からは外れているが、『長谷川の娘』としては、それが当たり前だった。

今、長谷川というブランドから解放され、一人地に足をつけたとき、心がふわふわするような感覚に陥る。



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